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【天国大魔境13巻 考察】春希を襲ったヒルコはコナではない

天国大魔境の13巻について、考察や小ネタをまとめる。ついに明らかになった浅草で竹早春希を襲ったヒルコの正体と、学園の生徒たちが生き残る方法とは?物語をより楽しむためのヒントに。
※本記事にはAmazonアソシエイトのリンクが含まれます。

天国大魔境13巻の小ネタ:表紙のキルコの瞳にマルがいる

あまりにも良すぎる表紙絵だったので拡大してみていたら、キルコの瞳にマルが描かれていることが分かった。キル光線のメンテナンスをしているということは、室内での休息のひと時だろうか。

キルコは巻を追うごとに、戦闘中に涙を流す場面が増えている。第1巻のころの強いキルコとは大きく変わってきている。その原因がマルへの想いだと暗示するような表紙。

ヒルコの心臓とアイデンティティをめぐる哲学

第75話のタイトルは心臓。高原学園の生徒がキルコとマルの目の前で怪物化してしまう回だ。恐らくヒルコを倒す際にマルタッチで握りつぶしているのが、ヒルコにとっての心臓だろう。ヒルコにとっての核である心臓はこの巻で最も深堀りされたテーマである。

マルはヒル気は感じられるがナタ気を感じられない

13巻p.75、マルはナタを感知できないことが明かされる。これまでの描写を振り返ると、恐らくマルはヒルコの心臓を感知している。同じ探知能力を持つミチカがp135でヒルコ化したノノコの核に切りかかったことからも明らかだ。

ミチカはヒルコの核を壊せなかった

ノノコの核に刃を突き立てるミチカだったが核は壊せなかった。恐らくヤマトとマルの能力でしかヒルコの核を破壊することはできないのだろう。仮死状態になった核は川に葬られ、そして78話の結末で復活したノノコがマルに襲い掛かる展開へとつながる。

核が本体だとしたら、人間としてのヒルコは何なのか

p.144~145の猿渡のセリフ、怪物が出来上がるまでの成長を支えるのが「ガワ」としての人格であり肉体であるのならば、学園の生徒たちに救いはない。第75話「心臓」の扉絵でマルが着ているTシャツには「The true identity is the heart(=自分を本当に自分たらしめているのはこの心臓)」と書かれている。生徒たちがヒルコの核が怪物化するまでの入れ物に過ぎないとしたら、悲しい。

人の本体は「体に備わった能力」なのか、「記憶や感情」なのか

ヒルコの核をめぐる物語から作品に通底する一つのテーマが浮かび上がってくる。

  • ロボットに脳移植をすることで怪物化の危機から逃れたナタ
  • ナタに脳移植したことで病気を発症してしまった園長(恐らく後に怪物化)
  • 姉の体に脳を移植して、自分の性自任や記憶があいまいになるキルコ

脳はナタの人格や記憶を司り、体はナタのヒルコとしての能力を司る。ロボットに脳移植してからのナタは、ロボットとして高い検索能力がアイデンティティ(ナタをナタたらしめるもの)になってしまっている

一体人とは何なのか、本来切り離せない脳と体を切り離したことで、「その人がそのひとである(」ということには何が必要なのか(=アイデンティティは心臓か、脳か)ということを考える哲学的な思考実験になっている

しかもナタに移植された園長の脳はクローンなのである。オリジナルの脳ですらない。園長と呼ぶべきなのか、ナタと呼ぶべきなのかも曖昧な存在であり、この哲学的な問いが『天国大魔境』を通じて、人間存在を考えることにも繋がってくる。

浅草で出てきたヒルコはコナの分裂体だった

 

2巻で春希(キルコ)を襲った透明化するヒルコは、コナの分裂体だったことがほぼ確定した。透明化する能力が同じだが、天国大魔境第6巻のp.74でミミヒメがみたコナの未来の姿と、春希を襲ったヒルコの姿が違ったのは、分裂体だったからだ。

そして今読み返すと2巻のp.34あたりで次のようなことを春希が言っている。

  • この前捕獲したのと同じ透明になるヒルコがいる(p.34)
  • この前見た奴ほど大きくない(p.39)

ここから分裂元の大きいヒルコ(=コナ)と小さいヒルコ(=分裂体)がいることが暗に示されていたが、ついに13巻p.183で両方揃って登場した

ヒルコは分裂する

思い返すと3巻ではヒルコ化したオーマが複数体に分裂していた。そのオーマの分裂がまさかのp.133 第78話扉絵で再度表現された。ノノコの件をきっかけに「分裂」してしまった高原学園の人々と二重で意味がかけられているのだろう

しかしまだ、ヒルコがどのように分裂するのかは明らかではない。ここは恐らく今後ポイントになるだろう。

ミミヒメの未来視とのリンク(6巻)

天国大魔境第6巻のp.74では、ミミヒメがコナの未来を視てしまう。この姿が2巻に登場したヒルコと少し違っていたため、未解決の謎とされていたが、今から考えると2巻の春希のセリフでもう一体の捕らえられている方がコナだと推理可能だったのである。素晴らしい謎解き要素。

天国大魔境の考察:コナの運命

コナが浅草に出てきたヒルコだとすると、気になってくるのが6巻p.72に出てくるコナの「狭いところに閉じ込められるイメージが怖い」というセリフだ。ミミヒメは自分が将来手術され続けるということを未来視しており、オーマに見せられたトラウマは手術道具だった。この文脈の中で出てきたのが上記のセリフだ。

コナがこの後の展開で生身のまま狭い場所に閉じ込められるのかもしれない。思い返すと浅草では『医者がヒルコを研究している』という噂があった。あれが露敏のことだとすれば?コナの透明化能力が露敏に見つかり、捕えられ、人体実験をされた果てにヒルコ化したのだとすれば…

コナの能力は透明化であり、ヒルコの中では極端に弱い。人間に倒されるレベルである。ヒルコ化した後もすぐに捉えられ、何らかの事情で分裂してしまったと考えるべきだろうか。猿渡に出会う直前に露敏に見つかってしまい、人体実験の対象にされてしまったのだとすれば、非常に悲しい。

もし実験の成果が「分裂体の発生」だったとすれば…?浅草を後にした露敏はヒルコ化したオーマのいる不滅教団のビルへたどり着く。オーマのヒルコが増えていた原因はもしかすると…。

コナが描いている絵(p.163)の考察

コナの描いている絵は当初より一貫して、その時点より未来の出来事である。p.163にある絵は、

  • 男性らしき人物が病気になる絵
  • ヒルコが羽をはやして飛ぼうとしている絵(その直後の展開か?)
  • 顔を塗りつぶされた赤ん坊

最後の顔を塗りつぶされた赤ん坊の絵は何だろう。まさか13巻で正式名称が明らかになった「ロボット坊や」なのか?

ヒルコの病気を取り除く方法について

コナは病気を取り除く方法を探すため、旅に出ようとする。この後コナはどこかのタイミングで4年後までにヒルコになってしまう。ヤマトは13巻冒頭に出てくる高原学園の生徒に顔が知られており、恐らくそのまま成長し、マルとそっくりな見た目になっているはずだ。ちなみに4巻p.123にもコナの絵として、ヤマトとマルの再開が未来視で描かれる。

お分かりのように学園の生徒たちの病気の原因はヒルコの核であり、核を取り除かない限りは怪物化してしまう。ただコナはロボットに脳移植され、怪物化するリスクがなくなったと思われるナタを目撃している

病気を取り除く唯一の方法が脳移植であれば、その技術を持つのは猿渡だけである。そのため、猿渡に会う目的でコナは旅立ち、すぐそばの浅草までたどり着いたものの、ヒルコ化してしまったのではないだろうか

そして猿渡が衝撃的な形で命を落としたため、脳移植というヒルコの病気を回避する方法は失われたようにも見える。ただ絶対に猿渡が脳移植をしていない「ロボット坊や」が12巻に登場したため、彼の脳移植技術が何者かに使われていることが示唆されている。

なぜアスラは怪物化しなかったのか

自殺してしまったアスラからはヒルコの核が出てこなかったと考えられる。もしアスラを火葬したときに核が出てきていたら、学園から出た二人目の死亡者であるタラオの火葬で核が出てきたときに「何ですこれは…!?」なんてリアクションになるはずがない(3巻p.66)

13巻p.145で戦士たちは生まれながらに怪物だったと語る猿渡。アスラも戦士と同様に語られているから、当初より怪物になるようデザインされているので、後に怪物になってしまう仕組みがミーナにデザインされていなかったと整理できる。

しかしトキオが2030年4月に硬化したわけだが、下手したらキルコとマルが主人公の天国編でもまだ硬化しているのでは…?

集結するヒルコたち

13巻終盤、遠隔で指示を受けどこかへ集結しようとする各地のヒルコたち。今まで使われていなかった羽をはやす能力が全員に付与され、浅草のヒルコが2体いることが明確になる。一方で、なぜか久々に登場した稲崎露敏も何かに呼ばれている。

体にヒルコを移植してしまったことで、伝令を受信してしまったのか、あるいは単なるミスリードか。注目が必要だ。

天国大魔境13巻の小ネタ:猿渡が彫ったマーク

12巻p.114で「カナヅチの模様が彫られた石」があったと誤解されていたが、まさかの「父」だった。なんて細かいネタ。同時に「照彦パパ奮闘記」に記載の内容の一部、「青島さん来る。」の詳細が明かされる。

天国大魔境13巻の小ネタ:復興省のロゴ

三種の神器をオマージュした復興省のロゴは、p.104でコナが描いている。デザインセンスがあるが、コナが描くものって何か意味深なものが多いので、今後注目ポイントになるかもしれない。そしてその直後のp.110ではモモイカが「ノノコは」「自分で決められないよ」「悲しいねー」と死を予知する。すぐに周りの人に言ってくれ

天国大魔境13巻の小ネタ:コナのTシャツ「Perspicuus」の意味

これはラテン語で「透き通った」という意味らしく、生物の学名でも半透明なナメクジでParmellops perspicuusとつけられているものがいるらしい。 

13巻で確認できた時系列 

p.102 高原学園奈良施設 2026年6月3日

p.116 高原学園奈良施設 2026年10月15日

p.167 コナ・ヤマトが九州から旅立つ 2030年4月12日

このあたりが明確に示されていた時系列だ。意外と生徒たちが猿渡のもとを去ってから時間が経っている。ちなみに第1巻でマルとキルコの視点の物語が始まったのが2039年の10~11月ごろ、第2巻でコナがヒルコ化して浅草で捕えられたのが2034年の8~9月ごろである。コナは約4年の間にヒルコ化してしまったようだが、ヤマトはどうなったのか。12巻でヤマトとマルの能力が同じであると明かされたようにも思われ、コナの横の小さいヒルコがヤマトとは思いにくい。それに青島は成長したヤマトと数年前に会っている。そして九州に出来たヤマ都とは?謎は深まるばかりだ。

おわりに

引き続き最高に面白い『天国大魔境』8巻までの解説だが、公式ガイドブックも良くできているので、序盤の謎解き要素を詳しく知りたい方は要チェックだ。