北千住の隠れ家カフェ
北千住にはたくさんの路地裏がある。ディープな生活感と野良猫に彩られたこの散歩スポットの中に、素敵なカフェがあることをご存じだろうか。
その名は「GRANARYS COFFEE STAND」。外観から伝わってくる渋さ。こんなに枯れ草が似合うカフェは他にないだろう。看板の文字の小ささは少し面白い。多くを語らない看板が象徴するように、ミニマルな魅力があるカフェなのだ。
内装は枯れ草と同じく熟成された古民家が、お洒落にリノベーションされている。暖かみのある喫茶スペースだ。梁や柱に歴史を感じる。
澄んだアイスコーヒー
今回はアイスコーヒー(500円)を注文。酸味の効いたものやキリッと苦いものなど、数種類の豆から選べる。
筆者は苦めが好きなので深煎りのケニアを選んだ。真冬の澄み渡る清流をイメージするような、透き通った苦味。冬の澄んだ空気に春の陽光が射す今の季節にちょうどいい。
様々なメニューがあり、ランチにもおやつにも使える。カレーがおいしそうだった。
スムースジャズが流れる静かな空間
絶妙な音量で流れるスムースジャズ。店内は一人客ばかりなので、本のページを繰る音と豆を挽く音以外は聴こえない。理想的な喫茶空間が提供されていた。
北千住と建築
ちなみに今回読んでいたのは幕張メッセなどを手がけられた建築家、槇文彦さんの本『建築から都市を、都市から建築を考える』。
白紙撤回となった新国立競技場ザハ・ハディド案に誰よりも早く反対した建築家で、デザインよりもその場所の歴史や人々の姿を優先した仕事をする人だ。
実は今回北千住に来たのも、槇さんが手がけた東京電機大学の東京千住キャンパスを見るため。いくつもの広場がもうけられ敷地と外の間の壁をなくした、市民に開かれた大学だった。
手前側が大学の建物、驚くほど街に溶け込んでいる。 槇さんは「孤独を楽しめる場所」こそ優れており、若い建築家にはそういった場所を作って欲しいと言う。
今回訪れた「GRANARYS COFFEE STAND」は、勤め先と家の間で素敵に孤独な時間を過ごせるサードプレイスとして、北千住に住まう人々の心の拠り所になるんじゃないか。全てが漂白化された味気ないチェーン店で、ただ時間を消費するだけになりがちな冷凍都市・東京。その片隅にある古民家カフェで、良質な一人ぼっちを味わってきて欲しい。
基本情報
北千住駅徒歩5分
営業時間は9:00~20:30(L.O.20:00)
火曜は17:00、日曜は19:00まで
定休日は水曜