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【瀬戸内島めぐり】日本一美しい豊島美術館で水に心を奪われる

瀬戸内海に浮かぶ島・豊島。人口800人のこの島が、今大きな注目を集めている。特に話題に上がっているのが、日経新聞の「専門家が選ぶ建物が魅力的な美術館」という調査で1位に選ばれた豊島美術館だ。

筆者の実体験を書いておく。

家浦港から豊島美術館へ

岡山の宇野港から船で30分弱、豊島の家浦港へと向かう。港に着き事前予約していたレンタサイクルを取りに行った。全ての道に強い傾斜が付いているので、電動自転車を確保しなければ大変なことになる。

そして瀬戸内の海や、豊島の豊かな自然の中を走り続けて20分、森を抜けると美しい棚田が広がっていた。

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瀬戸内の美しい田園風景の中で、人懐っこい猫が人間と共生している。棚田の中腹にあるのが豊島美術館だ。

豊島美術館

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不思議な外観に目を惹かれる。水滴の形を模した不思議な構造物には、柱が一つもない。世界的に有名な建築家・西沢立衛さんの設計だ。

その内部には内藤礼さんの作品「母型」が展示されている。どこからか現れる水滴が、建物内の傾斜にそって流れ、一日の終わりに泉になるという作品で、その移ろいゆく情景が心を落ち着かせる。

豊島美術館が評価されているポイントは、作品と建物が一体のものとなっていることだ。美術館でありながら、作品そのものでもある『母型』に、周囲の棚田の自然が溶け込み、まさに三位一体の希少な建築物となっている。

水に感情移入

広大な空間は白で覆い尽くされていて、本来なら恐怖を覚えそうな建物だ。しかし西沢立衛さんの妙技が光っていて、中にいる人の心を落ち着かせる。観ている人たちも、床に座り、あるいは寝転がりながらボーっと流転していく風景に、心をゆだねている。

そして流れていく水滴は、私に生命を感じさせた。こう書くとすごく高尚なことのように見えてしまうので、端的に言い換えよう。私は水をペットにしたいと感じた。

鑑賞後に友人たちと感想を共有したが、特に共通していたのが、水をかわいいと思ったことだった。生物の代理としての水が、泉を作り出していく。命がその源である海へと帰っていく姿を想起させる。

再生の象徴として

美術館ができるまで なぜ今、豊島なのか?

棚田の中腹にある美術館、というとまるで自然破壊の象徴のようだ。しかし実は逆で、再生の象徴だったのだ。

豊島は70年代から産業廃棄物の不法投棄で、徹底的に痛めつけられてきた。大幅に縮小していた棚田を復活させたのが、直島や犬島などでも美術施設をてがける福武美術館財団だ。

復活した日本の原風景の象徴として置かれたのが、豊島美術館だった。詳しくは「美術館ができるまで なぜ今、豊島なのか?」という本に書かれている。

美術館ができるまで なぜ今、豊島なのか?

美術館ができるまで なぜ今、豊島なのか?

 

その他の建物

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こちらは豊島美術館の敷地内にあるカフェ。その世界観に則ったスタイルで作られていて、長居したくなるスポットだ。ミュージアム・ショップも同建物内に併設されている。

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チケット売り場がこちら。この圧倒的ワクワク感、すばらしい。周りの地形を一切変えずにやっている上、棚田の景観も害していない。好感が持てる建造物だ。

アクセス・営業時間

岡山の宇野港か、香川の高松港、あるいは小豆島の土庄港からフェリー、定期船に乗って唐櫃港(からとこう)へ行くのがスムーズだが、豊島内にある家浦港で降りてレンタサイクルでも気持ちいい。家浦港-唐櫃港間はバスも運行しているが、本数が少ないので注意。

営業日・時間

定休日は火曜日だが、12月1日〜2月末日は水曜日も休みになる。祝日なら翌日に繰り越される。入館料は1,540円で、15歳以下なら無料。

開館カレンダー | ベネッセアートサイト直島

開館日のルールは複雑なので、必ずこちらでチェックしておこう。

また営業時間は3月1日~10月31日は10:00~17:00、11月1日 〜 2月末日は10:00~16:00とややこしいので注意。最終入館は30分前。

事前予約

10名以上の場合は事前予約が必要。

おわりに

瀬戸内のアートな島として、直島が取り上げられがちだけど、その隣にある豊島にもこんなに魅力的な建築物があった。

他にも回るところが多いエリアなので、休みをとってゆっくり流れる時間を体験してきてほしい。それでは。