Voyage Bibliomaniac

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【読みべき】ドラマ化された熱血少年政治マンガ『クニミツの政』

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マンガBANGというアプリがある。一日10話程度、有名作が読めるサービスだ。ちゃんと出版社にお金を払っているし、今っぽいマンガの読み方だと思う。

今月はそのアプリを使って『クニミツの政』を読んだ。週刊少年マガジンに連載されていた作品だ。久々に読むとエッチなマンガの狭間で、意味も分からず『クニミツの政』を読む中学生の俺がいた。懐かしい。たまにエッチなコマがあったんだ。エロガキだ。

どんなマンガかというと「GTOのテイストを踏襲しつつ、日本の腐りきった政治を良くしようと奮闘する少年マンガ」だ。被りようのない異色っぷり。

中身に触れる前に、原作者・安童 夕馬について書いておこう。

安童 夕馬

彼は週刊少年マガジンの敏腕編集者だった。本名は樹林伸(きばやししん)。ストーリーに口を出すタイプの編集者で、「金田一少年の事件簿」や「GTO」をヒットに導いた。

『金田一少年の事件簿』や「な……なんだってー!」で有名な『MMR マガジンミステリー調査班』に、キバヤシというキャラクターが登場する。彼がモデルである。

原作者へ転身

1999年に原作者へと転身。その才能を発揮し、関わった作品の多くが人気作となり、メディア展開されている。

ジャンルごとに名義を変えているため分かりにくいが、いくつも同時連載をこなしている。

例えば2001~2002年の間では、週刊少年マガジンで『クニミツの政』『探偵学園Q』『GetBackers-奪還屋-』モーニングで『サイコドクター』を連載している。ペースの速い週刊連載を4つも抱えたアイデアの鬼である。

これらすべての作品がアニメ化・ドラマ化されており、マガジンは彼に支えられていたといっても過言ではない。

それらの連載が終了した後にも、例えば2007年に『シバトラ』『BLOODY MONDAY』『神の雫』『エリアの騎士』を同時連載し、全てをメディア化している。

『サイコドクター』『神の雫』は実姉・樹林ゆう子との共同制作であるが、それでもすごい。『神の雫』はワイン関連の賞を多数受賞し、日本にワイン文化を広めたと言われている。

現在もマンガボックスというサービスを立ち上げたり、『金田一少年の事件簿』『サイコメトラー(休刊)』を連載したり、大忙しの様子。

真ん中の人、ラジオもやっていた。

そんな天才原作者が作り上げた少年政治マンガ。あらすじはこちら。

クニミツの政

クニミツの政(10) (週刊少年マガジンコミックス)

下町のヤンキーで蕎麦屋の息子であった武藤国光は、とある事件から政治に興味を持ち、代議士に弟子入りすることに。師匠からの紹介を経て、元県会議員・坂上竜馬の元で秘書として活動し、彼を勝たせるための市長選に身を投じていく。

熱い少年漫画

政治がテーマなのに熱い。政は熱くあるべきだと思える名作。汚職・インフラ・医療・教育・農業などの社会問題に、ヤンキーの愚直さで切り込んでいくクニミツの姿。これぞ少年漫画。

コーメイと呼ばれる選挙参謀も登場し、物語に奥行きが出てくる。馬鹿正直なヤンキーと謀略に長けたインテリが、それぞれの行動で票を獲得していく痛快さが魅力だ。

ライバル陣営も強敵で、時には人間離れなワザをも駆使して選挙戦を勝ち抜こうとする。選挙だって戦いだ。胸が熱くなるのは当然なのかもしれない。

スピンオフ作品

『クニミツの政』は90年代に大ヒットしたミステリーマンガ『サイコメトラーEIJI』のスピンオフ作品だ。こちらは超能力を駆使して事件を解決するミステリーマンガに、ヤンキーたちの抗争や友情が登場する複合的な作品である。

物語の中盤で武藤国光が政治に興味を持つことになる「とある事件」が語られるのだが、これがまた熱い。『クニミツの政』を読んでから読むと更に熱いのでオススメ。

『GTO』

担当編集だったこともあってか『サイコメトラーEIJI』も『クニミツの政』も『GTO』に笑いのセンスが近い。

そもそも『GTO』はヤンキーマンガ『湘南純愛組!』の主人公・鬼塚英吉が中学校の教師になる物語であり、『クニミツの政』の成立と似ている。

どちらもハマると思うのでぜひ。

『サイコメトラー』

サイコメトラー(10) (ヤンマガKCスペシャル)

現在は休刊中だが、『サイコメトラーEIJI』の続編、『サイコメトラー』がヤングマガジンで連載中だ。加害者たちは様々な理由で人を殺すのだが、その中に出てくる革命家たちのエピソードが熱い。

警察権力の腐敗を訴え、60年代の闘争をもう一度起こそうとするエピソードである。動機も方法も全てが熱い。キバヤシ氏の複雑な想いを感じる物語だ。

(『サイコメトラー』10~11巻収録)

時系列でいえば『サイコメトラーEIJI』→『クニミツの政』→『サイコメトラー』ということになる。

ドラマ化

『クニミツの政』は押尾学主演でドラマ化され、彼の代表作となった。まさか政治マンガのキャストがクスリで逮捕されるとは…。原作からの変更も多いが、高校編の舞台を小学校に移したことで小学生から人気を博したようだ。GTOに寄せていくスタイル。

おわりに

『クニミツの政』は少年漫画の可能性を広げた。選挙戦だって戦いだ。そこに主人公を応援する気持ちがあれば、血は熱く燃える。

家の本棚に置いておくと、子供が政治に関心を持つようになる。そんなことまで計算されて作られたマンガなんじゃないだろうか。本当に感動しました。Kindleで買おう…。それでは。