普段は『新・日本の階級社会』や『階級都市: 格差が街を侵食する』のような本を書いている社会学者・橋本健二が、大好きな居酒屋を調査することで、東京の中の階級差を明らかにしていく一冊。
居酒屋は社会を映す鏡
それぞれの街に趣の異なる居酒屋があり、メニューも雰囲気も客層も違う。居酒屋は社会を映す鏡だ、という視点である。特に山の手/下町の階級差を、歴史などを合わせてひも解いていったのが興味深かった。
考現学というのは考古学に対して作られた概念であり、考古学が昔の物質から過去を明らかにするように、現代人の暮らしを服装などから考察する学問だ。そしてこの考え方をもってすれば、居酒屋の中にも階級があり格差があることが分かる。面白い。
呑んべえ雑学
それ以外にも例えば「やきとり」に豚肉のモツ焼きが含まれる理由や、ニュー新橋ビル地下飲食街の考察など、居酒屋関連のうんちくが盛りだくさんで飽きない。
ホルモンの語源が「放るもん(=捨てるもの)」であるという俗説が、完璧に否定されていたり、ヤミ市の雰囲気がある居酒屋が紹介されていたり、呑んべえ雑学には事欠かない。
そして作者が実際に通った都内の店が、30店以上紹介されている。それぞれ個性が光る魅力的な店ばかりなので、このリストを手に入れられるだけでも価値があるだろう。
飲んだくれや、レトロな空間が好きな人は持っておいて間違いない一冊だ。