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【天国大魔境】8巻から分かったことを考察、「ちのこどく」の意味

『天国大魔境』の8巻を考察。ヒルコはどのようにして生まれるのか、「ちのこどく」の意味やアンジュラスの正体について。

表紙は園長の椅子に座ったミクラ

天国大魔境(8) (アフタヌーンコミックス)

ミクラが園長であることが種明かしされた8巻、改めてミクラ=園長であることを表紙で示している。

ヒルコはどのようにして生まれるのか

『地の孤独』編では、秘密を抱えた一族の姿が描かれる。ここで示されているのは、学園の外でもヒルコが生まれる可能性があるということ。どのようにして生まれるのだろうか。それを知るためには、まずp.32の図の謎を解き明かす必要がある。

血の蟲毒-日本神話をルーツに

p.32では、洞窟の入口に書かれた謎の図形が示される。この図の〇の数を数えてみると、11個あることがわかる。p.25でキルコが言っている通り、この集落には11人の人間がいることが分かっているので、この図は家系図であることが推測される。同じ家族内で複雑に子供が誕生していることが分かる。

p.35(45話表紙)では、11人の村人の姿が描かれるが、明らかに不自然な配置である。p.32の家系図と同じように、家族が並んでいるのだ。同じ家族内で子供を作り続けているため、全員目元がそっくりになっている。

p.48、子供が誕生するシーンでは、74歳のおばあさんが筆とインクを持って家をでる。家系図に新たに生まれた女の子分の〇を加えに行くのだろう。そして同じページで"熊野郎"は「男の子だとバランス悪いからな」と、発言する。11人家族の内訳は女7人男4人なのに、なぜ男の子が生まれるとバランスが悪いのか。この家族がこれまで続けてきたように、親族内で子を作っていくにあたって、女の子が多い方が「ちのこどく」を続けやすいということだろう。

親族内で子を成し、血を濃くすることによって、ヒルコが生まれることが示唆されている。「天国大魔境」のルーツともいえる日本神話において、八百万の神々が近親婚により子を成し、新たな神々を生み出していったことを想起させる(こちらのサイトで日本神話の家系図を作られている方がいるのだが、イザナギとイザナミという二人から、数多の神々が誕生している)。

血による蟲毒。蟲毒(こどく)とは、大量の毒虫を一つのツボの中に入れ、共食いによってその毒を強化させる古代中国の呪法だ。p.45でおばあさんがいう「ちのこどく」とは、「血の蟲毒」なのだろう。近親内での子は、体が普通の子供と異なることも多いという。竹塚のように、施設の子供たちに両性具有が多かったのも、そのような事情からだろうか。

タカの顔がイケメンな理由

天国大魔境(6) (アフタヌーンコミックス)

以前この記事で示したように、3巻で出てきたトトリ(ホテル王)はタカとアンズの子供である。3巻p.118でトトリは自分の顔のことを「鏡を見れば両親がイケメンだった事くらいは想像がつきますけどね」という。タカとアンズは顔が整っていた。8巻p.181~2では、タカがベビーカーに乗せたトトリを連れている。

次に6巻p160、コンビニで雑誌を立ち読みするシロとミミヒメ。20年前に疾走した俳優の北多民君太の特集記事を読みながら、「この人の顔……タカに似てるね」という。

この伏線が8巻でついに回収された。園長が施設の権限を回復しようとするシーンでミーナが出してきたクイズの中で、「第5問 精子と卵子の提供者は?」という問いの答えである4名の中に、北多民君太が含まれているのである。タカの遺伝子はこの失踪した俳優の特性が色濃く出ているのであろう。

この問いから分かったことがもう一つある。施設の子供たちは、たった4人の精子と卵子がルーツになって生まれているのだ。先ほどの「ちのこどく」と同様に、非常に濃い血の遺伝子が、ヒルコを誕生させているのだろう。

新しいヒルコ(アンジュラス)の正体

p.104では怪獣のようなヒルコの下を通ったマルが「光の手足で踊ってるみてーだ」と発言する。踊るのが得意な学園の生徒は、アンズである。p.181で、過去のアンジェラスの姿が描かれた直後に、同じエリアを子連れで移動するタカの姿が描かれることから、アンズがアンジュラスになってしまったことがわかる。タカは、怪物になってしまったアンズを守る様に付き従っているのだ。

しかし天国編と魔境編でアンジュラスの見た目が異なっていることが気になる。そして「ズバッ」という効果音。もしかすると別のヒルコを取り込んだり、合体することでさらに強くなっているのかもしれない。

災害の時のマル

p.115 ミーナのクイズで登場する施設の職員「島崎信夫」は、p.14で災害の中、子供を抱きかかえている。島崎は青島と同様に施設に潜入していた者だったのだろう。この時島崎に抱えられていたのが、マルだと思われる(足の裏に〇が書かれたトキオの子、もしくはクローン)

医者の正体

キルコの前から姿を消した迫田という医師の正体が猿渡であることは、別の記事で書いたが、p.116のミーナのクイズで改めて猿渡の本当の名字が迫田であることが示されている

ククの死とヒルコ化

p.155 ククの死は、ミミヒメと同様に洞窟の中を突き進んでいく形で示された。今回は誰も後追いをしていないので、1人で進んでいく。p.178で海に流されたククの遺体。病気を発症していたので、彼女は海の中でヒルコ=怪物になってしまう。怪物化したクク(魚のヒルコ)との戦いは2巻参照。

おわりに

p.149には、復興省のエンブレムが描かれる。三種の神器(勾玉、剣、鏡)を図示したと思われることから、同じく日本神話をルーツとしていた高原学園との組織的な継続性を感じさせる。元々高原学園に属していた人々の一部が、復興省を立ち上げた可能性がある。

 

天国大魔境公式コミックガイド 「天国」の秘密と「魔境」の歩き方 (アフタヌーンコミックス)

まだまだ謎の多い『天国大魔境』だがアニメ化も決まり、公式ガイドブックも発売された。今後どのように伏線が回収されていくのか、引き続き考察していきたい。それでは。