筆者は普段、自己啓発本を読まない。いつも途中で何かわかった気になって、うっちゃってしまうのだ。そんな私でも読み通せたのが、この『クリエイティブ思考の邪魔リスト』である。
誰もがクリエイティブ思考を持つ
日本人はクリエイティブな思考を、一部の天才が持っているものだと思い込んでいる。しかしアイデアを生む力は鍛えて獲得していくものである。そのクリエイティブな思考を邪魔しているものについて、順番に書いていく、というのがこの本の趣旨だ。
15 項目の邪魔リスト
1 制約を侮ってはいけません
2 名刺は名前以外を見てはいけません
3 慎重に計画を練ってはいけません
4 「考えても仕方がないこと」を考えてはいけません
5 周囲からの影響を軽く見てはいけません
6 「知ったか病」に冒されてはいけません
7 自分の「型」に他人をはめてはいけません
8 「男だからハイヒールは履かない」と言っていてはいけません
9 弱みを克服してはいけません
10 グローバル時代に異文化を学んではいけません
11 違和感から逃げてはいけません
12 「自己ブランディング」に罪悪感を持ってはいけません
13 惰性リズムを積み重ねてはいけません
14 「運動」を仕事と切り離してはいけません
15 徹夜した自分に酔ってはいけません
著者いわく、これらがクリエイティブ思考を妨げているのだという。中にはただの生活指南なのでは?というものも混じっているが、それはご愛嬌。
ユニークな例え話
まるで釈迦が教えを伝えるように、たくさんのユニークな例え話が登場する。
自分より若く立場が下の人から学んでいく、リバースメンターシップという考え方なんて、めちゃくちゃ新しい。それですら知り合いの実体験として語れるのが、作者・瀬戸和信の魅力だ。
日本オラクル、日本マイクロソフト、フィットピットなど、様々な先端企業を渡り歩いてきた強者だけあって、色々なことを経験している。
制約がクリエイティブな思考を生む
特に感心したのは、リストの一番上にある制約の例え話だ。
ここではクリエイティブな思考に制約は必要であると、普通のイメージとは真逆の論旨になっていることが面白い。
その例えとして使われたのがTwitterだ。かのSNSでは、1つの投稿を140字の中に納めなければならない。だからこそ余分な内容を切り捨て、本当に言いたいことだけを適切に切り取っていくという努力が生まれる。それこそがTwitterの魅力なのだと瀬戸和信は語っている。
仕事のやり方まで上司が指示するような悪い制約もあれば、方向を定めることでアイデアが深化していく良い制約もあるということだ。すごく参考になる一節なのでぜひ読んでほしい。
おわりに
新たなアイデアを生む原動力について、新たな切り口から書いた『クリエイティブ思考の邪魔リスト』は、今まさに私たちが必要としている本ではないだろうか。
21世紀が始まって20年弱、AIによって消えると言われている仕事のリストは、増え続けている。そんな時代を生き抜くための、「当たり前だけど気づきにくいこと」を教えてくれるリストなのである。